アマゾンプライムで鑑賞
私がちょうどこの主人公女性達と同じ年齢にあるからか、ママ友関係、夫婦関係、結婚前のボーイフレンド関係、キャリア、複数の子供との性格の合う合わない、家族を回していくやり方など全て今自分がやっていることなので容易に主人公のエレナ(リーズ・ウエザースプーン)の目の回る忙しさ、そして他人に与えるウザさ勝手さが想像できました。
お話は同年代ぐらいの高校生を持つ白人リベラル母とその家族、と、彼女の所有する借家に引っ越してくる黒人アーティストの母子家庭親子が色々からみあい話が進んでいきます。
この2人の主人公は決して自分勝手ではありません。
自分勝手にしないと人生が回らなくなるから自分の選択で生きてきただけ。彼女たちの自分勝手さをエレナは旦那に、ミアは娘から責められるシーンがあるけど、決して言い訳も反省もしてませんから。
生きるために必死なのです。女ってやつは。前に進むことしか考えてませんから。
これはオハイオ州の高級住宅街という設定ですが実際どこでも起こりうるしそしてこのような小さな火は多分どの家庭でもあることだと思います。それが大きな火事になるのがドラマならではなんですが。
設定が1997年なので、携帯電話普及前夜というとても微妙な時代。まだまだトランプには程遠いが今の方向へに動くためにもうすでに火種は蒔かれていた時代。
一つ一つに意味がある。
産む産まない選択
アートの定義
空気のような存在のマイノリティ
マイノリティから見た白人社会
リベラルのつもりの白人の発言がいかにマイノリティを傷付けてるか
養子縁組
親に捨てられる子供
子供に捨てられる親
…..
まず一番大きなテーマはお互いを理解できない白人と黒人は友達になれるのか。アメリカ社会に問うかたちでそのテーマが根底に流れる。
黒人のお赤ちゃん人形は無料っていうのはどぎつかったなあ。貧乏な家庭で育てられるよりも、いっそのこと子供のいない金持ち白人家庭に育てられる方が子供にとっては幸せであろうという現代の西洋社会の常識を揺さぶる問題提議。
あと、ほんとうにやられた!と思ったのがフォーチュンクッキーをお誕生会のお土産に出すことで中国という色を出したかったエレナの浅知恵を暴く証言台。さすが原作者が中国系だからかこのあたりの描写はすごい。
全くバックグラウンドの違う黒人2人がパーティで一人ぼっち同士になってたときには「あなた達は共通点がいっぱいあるからいい友達になれるかも」と優しく声をかける何も知らない白人たち
あと、マクドナルドの注文を間違える黒人の店員に「あの子も大学へ行けばこんな間違いはしないのよ」と悪気なく言う白人ガールフレンドにキレる優等生の黒人ボーイフレンド
黒人VS白人という単純な構図だけでは済まされない。
その不気味さの小さなエピソードが自然と重なるようにそして一つずつ大げさにデフォルメするのではなく日常の茶飯事のように<見逃す>ようにできている演出。
そして自我の目覚めだした子供との関係。代理母、養子縁組の親子関係に今までの成果第一主義社会の中で見逃されていた生理的倫理観と言うべきか、野生の母性への叫びを見せながらも肯定も否定もしない。ただ見せるだけの問題提議はあたらしい演出なのかしら。
アルモドバルとはまた違う、女性を見つめ尽くしたドラマ。リーズ・ウィザースプーン独特の白人プロテスタント女の傲慢さといやらしさを見事に出し尽くした演技もすごい。この人実生活もそれっぽいのにここまで自分を客観視してたのか、普通に素でやったのか、それさえわからない。
オーディオブックレビュー:
アジア人ならこれ