ダイバーシティだの多様性だとかいう前に、足元の問題を見つめる大切さを教えてくれる映画。
よっぱらい飲み屋の立ち飲み屋の政治談義でさえ。1968年設定というから、涙が出るほど登場人物がみんな個性的。
登場人物は、
ぼんぼんの京都の寺の高校生の息子⇒絶対クラスに一人いる
ちょっと先輩のぼんぼんの自由主義者の酒屋の息子⇒いるいる
親も親戚も朝鮮人の京都生まれ京都育ちの子
とりあえず血の気の多い朝鮮高校のワル兄
ソ連人の恋人を持ち共産主義に走る高校教師⇒この単純設定はお笑い
京都のワル連
朝鮮のワル連
朝鮮部落のおっさんおばちゃんたち
上司をなぐるKBS京都のディレクター
なぜかヤンキーで2020年を予期したかのようにマスクをしている真木よう子・・
京大周りの中核派ヘルメットのお兄さんたち⇒お兄さんたちは地方出身の優等生なので京都のワル高校生にコロリと騙される。。
スイッチを入れると音楽について喋りまくる楽器屋店員⇒京都の個人店っていまでもみんなそう・・
本当にあんな時代でした。京都の70年代って。。。ほんまにあんなんだったの。しかもかすかに覚えている60〜70年代のあの暴力性。あたしもそこにいたんだよ!!!!ベラミ発砲事件とか、かすかーにおぼえてる。あの嵐電で真木よう子につれられてる女の子みたいなん。あれ私です。京都で同じ空気と同じ水を吸ってたんです。
フィクションではあるが、あの頃銀閣寺の観光バスが高校生のけんかのためにひっくり返されても全然不思議とは思えない。
イムジン河とKBS京都
すごいわかる。濃いDJと地元ラブのラジオ局。
私が中学生の頃はKBSではおすぎとピーコが深夜放送をしてた。他にもDJをしてたが彼がの話がいちばんおもしろかった。今は綺麗な鴨川の公営団地になってしまったゼロ番地の朝鮮部落(あのロケ地とか橋の風景とかもうない。。今や京芸大も建つとかの噂。なんどかケンカシーンで出てくる新京極商店街もあんなんじゃない)決闘場所の鴨川デルタは当時あんな立派じゃなかった。
これは京都の人でないと知らないこともいっぱい詰まってる。京都の人でも縁のある人しか知らない話だろう。
うちの家は市内だったけど私は毎日小学校の時から市バスや市電に乗って通学してたから、いろいろ街の人をみてた。真木ようこみたいなメイクのお姉ちゃんもいた。混んでるバスの中で私のランドセルをどんどん押してくるヤンキーお姉さんもいた。それでもみんな陰湿ではなくアッサリしてた。
沢尻エリカも彼女自身のハーフという立場で若いのにこの役をよくやったなあと思う。彼女の日xアルジェリアという血もこの役の理解に役立っただろう。フランスに対してアルジェリア、日本に対して北朝鮮。監督はわかってただろうかと思うぐらい、彼女しかこの理不尽さを不機嫌でやるせない顔で表現できる日本の女優はいない。彼女が表舞台から消えたことは本当に残念。
オダギリジョーも飄々とした得意の高等遊民をうまくやってたよね。しかしやっぱり素晴らしいのはこの映画のセリフのすべて。くさいセリフでさえ彼が言うと青いのではなく、皮肉に聞こえる。
今の雰囲気じゃ、「これはこれ」という一元的一方的な意見はたまに映画の中でも喋らせて入るがこの映画のように多元的に自虐もいれて登場人物に政治的なことを話させるのもおもしろい。誰も間違ってない。みんな自分の立場から話をしている。
朝鮮部落や、北朝鮮帰還キャンペーン、暴力団のたまり場発泡、フォークソング、けんか、学生運動、地方の放送局。。
インバウンド観光で骨抜きにされる前の京都はほんとうにおおらかで素晴らしい。撮影もインバウンド爆発前だから街が落ち着いている。そして見てほしい。一カットも女々しい京都の観光名所らしいところは出てない。JRそうだ京都行こう、的な外の人が期待する京都はこの映画にはない。それが京都人としてはかなり愛おしい。
エロ映画館の八千代館、祇園の怪しい飲み屋街、京都タワーは変な尺で出てくる。
インバウンドは本当に京都をだめな街にしてしまった。。いや、コロナを経てしまってからはちょっと変わったかもしれない。インバウンド時の京都はなんか恥ずかしかった。自分の好きな京都をずかずかと知らない人が入ってくるんだもの。今時分も同じことをしてるのかもしれないけど。
京都を愛するあたしがおすすめする。ほんとの京都。京都は決して女性的なチャラい街じゃない。ちゃらい多様性の街とかに変えるな。白人がいるから多様性なんかじゃない。こういう人たちとも痛みをわかちあいながらも育んできた呪いの街。だから京都は懐が深い。というのが昔の京都人の答えだろう。
何回見ても泣ける。北山修、加藤和彦という京都で出会った才能の音楽・・
蒲田行進曲みたいな終わり方なんだけど(赤ちゃんが何故か嵐電の帷子ノ辻近くで産まれるという設定という点で)ベタではあるが人間の営み感が最高にいい。黒人映画みたい。生命力の塊。
京都ってほんとこういうところ。大好き。
もちろんこの映画の舞台となった頃から数年後に横田めぐみさんが新潟の海岸から消えたことも忘れてはいけない。国家は愚かでも、子供は生まれ泣き食べて育っていく。なんか、うん、ええもんみせてもうた。
後記: 2021/9/21
これブログ後『パッチギ!』をご覧になったミュンヘン在住の持田さん(パリ時代にご近所でした)のご感想。70年代の下町の風景はどこも同じようだったのかなぁと、かすかな記憶しか残らない70年代ですがとても男気のある時代だったのかなぁ。。。と思ったり。
https://mochida.cc/%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%AE%EF%BC%81/