今から考えるとマダム・サッチャーの登場は女性の権利、平等権利とか言う前でガチガチの時代にひょこんと出てきた女性首相だった気がする。その誕生の様子もサラリと描かれている。まるで偶然が偶然を重ねた瞬間だったように。
彼女は普通の保守党の議員だった。ただ、議員からいきなり党首になり、首相になっちゃった。あれあれあれと言ってる間に。
フォークランド紛争のところなんて彼女ってほとんど外交歴がないのに判断しちゃうところとか単なる思いつきとしか思えない。え?ほんまにええんかいな。ノリですね。的な判断でアルゼンチンを懲らしめて人気ものになってしまう構図とか。。。私はあの時まだ小さかったけど、なんとなく覚えています。ダイアナさんやデビッド・ボウイがでてきて、なんか、遠い国だけど強い国だなぁとイメージしかなかった。
とはいえ映画は回顧録なので晩年の彼女。すごい好きですこういう老夫婦もの。先日見た、グレン・クローズとジョナサン・プライスの老夫婦ものも地味ながらも長年の女性の恨みがよく出てたし、80年代90年代に活躍してた女優さんたちが70代になってもまだまだ頑張ってこういう演技をするのはすごいなと。しかも老夫婦の芸達者すぎて、メリル・ストリープなのかマダムサッチャーなのかわからなくなる。ふと気がつくと娘が女王陛下のお気に入りの方とはちょっとびっくりするけどね。
さて、この映画の感想として、それにしても女性政治家というのはみなどこかお父さんに褒められたい欲のためにここまで成り上がったんじゃないのかしらぁという。。すごく感慨深い。パパ・ドント・プリーチなマドンナみたいな親に反抗する娘には務まらない。小池百合子、高市早苗、豊田真由子、杉田水脈、小渕優子、マリーヌ・ルペン。男社会の中で生き残ってる女性たち。男よりも男らしい女達。そして映画ではこの人の女性性ってそこまでフューチャーされてないのが残念といえば残念。それがテーマでないから。高慢な顔もするけど、それは女に向けたものではないところが優しい作りになってる。実に2000年的だ。
アルツハイマーを患ってる老後の回想設定なので編集も結構交差したりしながらもしっとりとしたいい作品。決して夫のデニスをバカにもせず、コケにもせず、家族として愛してた視線にすごくこの人の人間さを感じた。でもそれが本当か嘘かはわからない。もしかしたらこのマダムは変人でもなかったと思う。ただただ、かっこいいお父さんにもっと愛されたかっただけかもしれないなぁとふと思った。