抹茶アイスからの気づき
昨日、あまりに暑くてハーゲンダッツの抹茶アイスを食べていました。
でもパッケージには「Matcha」ではなく「Green Tea」と書かれている。え?どういうこと?と思い調べてみると、ハーゲンダッツのグリーンティは日本で30年以上愛されており、まだ「Matcha」という言葉が世界に知られていなかった頃からサントリーが輸入販売していたのだとか。なるほど、と妙に納得しました。
👉 フランスでも売られているのは「ハーゲンダッツのGreen Tea」。
参考記事(日経アジア)
いま世界は“Matchaブーム”。スターバックスからスキンケア商品まで、抹茶の緑は世界を席巻しています。そんな中であえて「Green Tea」と表示するハーゲンダッツに、逆に潔さを感じてしまったのです。
AOPとは?フランスの知財保護の仕組み
想像してみてください。もし「Matcha」がフランスのシャンパーニュのように、産地と製法を守るAOPを持っていたら――。
AOP(Appellation d’Origine Protégée)は、1935年にフランスで始まった原産地保護制度。
偽物ワインの横行に対抗して、フランス政府が INAO(国立原産地・品質研究所) を設立したのが始まりです。当初はワインだけでしたが、今ではチーズ・バター・蜂蜜・肉・果物・精油にまで広がり、2009年からはEU全体の制度として運用されています。
つまりAOPとは、「地域と伝統的な方法に基づいて生産されたもの」であることを保証する、強力なブランド防衛システムなのです。
日本のGI制度との違い
日本にも GI(地理的表示)制度 があります。
これは地域で生産された農産物や酒類の特性を守り、由来を正しく消費者に伝える仕組みです。覚えてる限り、、あの田中康夫さんが長野知事だった時代に始めた制度じゃなかったっけ?
- 酒類は国税庁、農産物や食品は農水省が管轄。
- 日本酒 山形「出羽桜」 や灘も、酒米「山田錦」、焼酎「鹿児島焼酎」沖縄のちんすこうも!
- 2015年からは日本ワインも対象になりました。
ただし、日本のGIは比較的新しい制度であり、まだ国内外での認知度やブランド力は欧州のAOPには及びません。

よくわかる日本のGI
そもそもGIってなに?
世界が守ってきたもの、日本が守らなかったもの
AOP本家のフランスでは、シャンパーニュ以外にも多彩なものがAOPで守られています。多彩すぎてびっくりしますけどね。
- Poulet de Bresse(ブレス鶏):世界で唯一AOPを持つ鶏肉。「鶏の王様」と称される。
- Huile essentielle de Lavande de Haute-Provence:高地で栽培されたラベンダー精油。アロマ業界で高評価。
- Lentilles vertes du Puy(ピュイ産緑レンズ豆):火山性土壌で育つ高級豆。普通の豆の2〜3倍の価格。
- Piment d’Espelette(エスプレット唐辛子):バスク地方特産。1袋10〜20€と高値安定、観光資源にも。

la Lentille Verte du Puy
1ère légumineuse européenne à avoir obtenu une AOP, véritable fierté culinaire de la région Rhône-Alpes-Auvergne
フランスの場合は、AOPだけではなく、IGP(Indication Géographique Protégée)=地理的表示保護 (AOPほど厳格ではなく、「原料の一部」や「製造工程の一部」が地域に関係していれば認められる) Jambon de Bayonne(バイヨンヌの生ハム)や、1960年につくられたLabel Rouge (レーブル・ルージュ)「通常品より高品質」であることを保証する国の公式ラベル。→卵などに安心。などがあります。。。
つまり フランスは「ただの食材」をAOPで資産に変えているのです。
もし宇治がAOPを持っていたら
「Japan Matcha」ということ、つまり日本の抹茶だということをアピールできる工夫が必要ではないでしょうか。GIやAOPラベルが付くだけで、世界市場では2〜3倍の価格で安定して取引されたり、、もう中国産の抹茶がMatchaと言えなくなり、、若者が茶畑に戻り、宇治は世界に誇るブランド産業となり、観光は巡礼地のように整備されていたのではないでしょうか。。。例えば、抹茶アイスという限りはリアル抹茶を何%以上入れろとか、、そういうイニシアチブがなぜ日本の農水省でとれないのか・・・もちろんお茶もブレンドが多くあり、京都も静岡も鹿児島もGIをやってないわけではないようですが、個人レベルではなくもっとリーグでこの知財を守る必要性があると思います。
現時点での野蛮なオーバーツーリズムではなく、シャンパーニュのようにしっかり管理された「お茶の聖地」になっていたかもしれません。
抹茶の現実
しかし現実は、「Matcha」と書けば中国産でも堂々と売れるこの悲しさ・・・
覆下栽培・蒸し・石臼挽きという緻密な工程を経る日本産は、品質で勝負するしかなく、十分な価格プレミアムを享受できていません。その結果、農家の収益は安定せず、継承意欲も削がれかねません。

第二の抹茶を生まないために
抹茶だけでなく、ゆず・かぼす・椎茸パウダー・発酵食品…こうした日本の宝も、今のままでは同じ道をたどるかもしれません。ええ。どうします?
知財なき国は、食材大国になれない
早急にすべきことは何でしょうか。。
- GI以上のAOPでの国際展開を加速:国内登録だけでなく、輸出先市場でも守る。人口減少を見据え、輸出中心の商品設計を。
- 物語でブランドを固める:「何百年の知恵」「地域の風土」を語り、生産者の顔を見せること→栽培者などの豊かなストーリー
- 輸出企業の連携:一企業や小規模農家では戦えない。連合体でブランドとロジを共有することが必須。→意外とできない日本の業者
抹茶の教訓はシンプルです。守らなければ奪われます
「抹茶は誰のものか?」――それは畑を守る人、技を継ぐ地域のもの。その事実を制度で可視化し、価値の帰属と対価の流れを明確にする必要があります。農水省や現場の努力を知りつつも、今からでも遅くありません。小さくても一歩ずつ実装して発信し、世界に示すことが大切です。
もう「いつも損するジャパン」はやめましょう。日本の農産物は、きちんと守って、きちんと稼ぐ。そう持っていってもらいたいものです。
農水省日EU・EPAにおける
地理的表示(GI)の取扱いについてレポート
国内外における地理的表示(GI)の保護に関する活動レポート(海外の偽物報告書)




